4月中旬、信頼している歯科医院より、8歳の女の子が、紹介されてきました。「右上の中切歯(1)は生えてきたけど、左上の中切歯(1)は出てこないので、外科的に歯肉を切って、歯を牽引して、引っ張り出して下さい」とのことでした。 写真を見てください。右上切歯(向かって左)1は、出てるのに、左上切歯は、全く出てくる気配がありません。
ある矯正の先生は、「矯正治療は、診断8割、治療2割」とおっしゃっていました。それ程に診断は大切です。
当医院での検査のほか、必要があったので、大きな病院へ行ってCTを取ってきてもらいました。出てこない歯の形態、位置を確かめるためです。歯の形態は大丈夫そうです。位置も大丈夫そうです。ただ、歯根と骨が癒着しているかどうか?癒着している場合、歯は移動しません。レントゲンやCTでは、判断がつきにくいのです。
その歯の移動が可能な場合??もし、その歯の歯根が骨と癒着していて移動できなかった場合どうするか??悩み続けました。行き当たりばったりの診断はしてはいけません。あらゆる場合、選択肢を考える時間です。昨晩もほとんど徹夜です。そして、今日、診断です。出てこない左上の中切歯(1)を時間をかけて、牽引していくことに決めました。 動かない場合も想定済みです。
今回、診断にあたって、小児歯科の先生の話や文献を探してみました。その結果、分かったことです。
1.中切歯の埋伏は、片則性のものがほとんどである。(ある論文だと両側性は5%)
2.中切歯の埋伏や萌出遅延は、低年齢期の乳切歯の重度のう蝕が関与しているものがある。
特に2ですが、乳切歯が虫歯になって、根元に膿が溜まるとそれに続く永久歯の萌出方向が変わり、出てこないことがありますよ。ということです。今回の患者さんは、何が原因だったかは分かりませんが、、、乳前歯の大きい虫歯は、要注意ですね。